ニューエイジについてのキリスト教的考察【書評】

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世界でも有数の知的エリートが集うキリスト教のローマカトリック教会が、異教徒に対しての批判と組織としての対応について書いたもの。非キリスト教徒としては、色んな意味で興味深い本です。まず巨大組織が自分達と異なる思想に対して公式マニュアルとしてはどう対峙するのか、という組織論的な意味で。次にキリスト教とニューエイジーやスピリチュアルの対立軸はどこかという点で。

西洋におけるニューエイジー運動は従来の西洋社会で支配的だったキリスト教の価値観に対する対抗文化としての側面を持っています。なんせ「魚(キリストのシンボル)の時代は終わった!これからは水瓶(アクエリアス)の時代だ!」というスローガンがあるくらいです。

「組織宗教の時代は終わった!これからは1人1人が直接神とつながる時代だ」という意味では、私自身はニューエイジーのほうの主張に近い意見です。これからは誰かにもらったマニュアルをただ単に信じるのではなく、個人個人が「色んなことを体感していくうちに悟り的な感覚をつかんでいく」というほうが時代の流れとしてはメインロードになっていくでしょう。

なのでキリスト教カトリックの総本山としては、「時代の新しいムーブメントに対して、組織としてどう対処すべきか」という公式対応マニュアルを出す必要性を感じたのでしょう。

ニューエイジーやスピリチュアルとキリスト教の対立軸のうちで一番大きいものは答えから言うと単純です。キリスト教の人達にとって「イエス・キリストは唯一の特別な救い」であり、そうではない全ての人達にとっては「イエスはたくさんいる聖人の中の一人にすぎない」というのが重要な所です。

佐藤優の「神学の思想」(こちらはキリスト教はキリスト教でもプロテスタント神学)でも同じようなことは語られていて、キリスト教の人にとって 「イエスは唯一の救い」なのです。それ以外の人にとって、「イエスはたくさんいる預言者キャラ・癒やしキャラの中の一人」でしかないのです。

ここに決して合意することが出来ない部分があるということが分かれば、相手の思考ルールが一つわかるわけですから重要なのです。


アメリカ・イギリス・フランス、世界の先進国の大半はキリスト教社会です。日本だけが先進国のなかで別タイプの文明を持っています。政教分離という話を多くの日本人は真面目に受け取り過ぎている傾向がありますが、アメリカ大統領は聖書に手をあてて宣誓します。ドイツでは教会税(所得の8-9%)を国家が代理で集めています。(教会税が嫌で役所にキリスト教徒としての登録をするのをやめるドイツ人も増えているようです)

それくらい宗教というのは大きな影響力を持っています。なので、国際化時代の現代においてキリスト教の知識を得ることは重要なのです。

多くの日本人はキリスト教の世界の人達とは異なり、

*八百万の神々と仏達からなる多神教的な精神世界
*「神は私達一人一人の心の中にある」という神道的フィーリング

を持っています。

この視点はキリスト教世界とは全く違うので、日本にとって他の先進国というのは実はすべて宇宙人の国のようなものです。彼らの思考を理解するためには、キリスト教のロジックを理解しようとすることは重要になります。

ただ、この本自体は、本質的に「ローマ・カトリック教会によるカトリック信徒のための理論武装マニュアル」なことは注意しておくべきでしょう。これは宗教書の全てに言えることですが、精神的に非常に落ち込んでいる時に読むと、エネルギーが強い本が多いだけに望まない方向に影響される危険があります。

余談ですが、キリスト教は日本でそこそこの影響力を獲得しており、吉田茂は死んだ後にカトリックの洗礼をうけましたし、吉田茂の孫の麻生太郎もカトリックです。あまり報道されませんが別に機密事項というわけではありません。鳩山一郎(鳩山由紀夫の祖父)や石破茂はプロテスタント。大平正芳は聖公会(英国国教会系)。意外にも政治家の耶蘇率は低くありません。

 

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サイトの運営方針は「自分とは何か」「日本文明とは何か」という二つの問いへのインスピレーションを刺激する話をすること。人生で大切にしたい事は「遊び・美しさ・使命・勝利・自由」。 なお、日本的精神文化のコアの一つは「最小の力で最大の成果」だと思う。例えば「枯山水(禅寺の石庭)の抽象的アート表現」などは、良い例。