日韓外交史: 対立と協力の50年【書評 | 評論】

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たまには、歴史問題に関して韓国側の論理も推測してみようと手に取ったのですが、この人達の対日政策のロジックが「ガキ大将的」であることが分かる本でした。一方で日本を罵倒しつつ、一方で日本からもっと支援をと主張しているのです。ただ、韓国の元外交官が書いたものではありますが、冷静に日韓情勢を分析しようという視線が貫かれている点では面白い本です。

日韓基本条約でもっと日本からカネをふんだくれなかったのは誠に残念と悔しがっていますが、同時に当時の韓国にとっては妥協が必要な状況だったということをあっけらかんと説明しています。日本の経済支援が「漢江の奇跡」と呼ばれる韓国の経済発展に必要な要素だったことも明らかにされています。

また、「日本にも韓国にも都合良く解釈できるような所で妥協点を作っている」ところがある日韓外交の歴史を「外交なんてそんなもの」と素直に認識している面もあります。

例えば、日本が朝鮮半島を自国領にした日韓併合について、日本側は「正しいことをした」というタテマエを譲ることはありません。韓国側としては「不当だった」というタテマエをゆずることはありません。

こういう問題は、お互いに譲らないままで棚上げするなり、冷戦状態のままでいるなり、妥協しないままにすることが基本になります。さすが外交官だけあって意外にまともなことを言うものだなと感心しました。

もうひとつ少し意外だったのが、冷戦時代の話ですが「安全保障面でもっと日本の援助が欲しいのに、あいつら憲法9条をタテに腰が引けたことばっかりしやがって・・・」という論調の文章もあったことです。米国の安保ただ乗り論(日本は同盟国なんだから米国にもっと軍事貢献しろ論)みたいな抗議ですが、意外と韓国政府の中の人にも「日本の軍事協力をあてにしているんですけど・・・」意見もあるというのが面白い発見でした。

確かに、朝鮮半島で再び戦端が開かれた場合、日本が米軍および韓国軍の後方支援基地として機能しないと韓国軍は苦しい状態になる可能性があります。なので「タテマエとしては日本は大嫌いだけどいざという時に軍事協力してもらわないとヤバイという本音がある」という複雑な気持ちになるのは理解できなくはないです。

ただ、米ソ冷戦という枠組が終わり、韓国の敵としての北朝鮮が「明日にも崩壊するのではないか」とささやかれるような状況になってくるとこの辺の話の前提が変わってきます。お互いに共通の敵がいるから「まあ、細かいことは目をつぶって協力しようや」という関係性だったのが、協力すべき理由が弱くなってしまうからです。

「仮想敵を作る」というリーダーシップはよく批判されますが、敵がいない世界というのも無条件にいいことばかりというわけでもないようです。

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