勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求むる (孫子の名言)

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孫子の言葉で、勝ちに行く兵は「まず勝てる状況を作り、それから戦う」。しかし、負けにいく兵は「とりあえず戦ってから、それから勝利を願う」という意味の名言です。そもそも勝てる状況を作ってから戦うのが王道だという話になります。

たとえば、試験勉強をするのに、「完璧にしてから」テストを受ける。セールスなら、欲しくて仕方が無い人を集めて、購買意欲を高めてから売っている状態。もしダイエットのコーチングとかをやるなら、「そもそも標準体重より大きくオーバーしている人」で「動機が切実な人」だけを対象に実行するということです。

要するに、「あきらかに、成功しかしない」状況を作ってから本番に臨もう、ということですね。やや口の悪い言い方をすると、サルでもできる事をやるからこそ成功していく、という話でもあります。

例えば関ヶ原はどうだったか

歴史上の関ヶ原の戦いも、西軍と東軍の勝敗の鍵を握ったのは事前の情報戦でした。西軍と東軍は、それぞれ全国の武将に「ぜひともお味方に」という手紙を送っていました。

たとえば、勝敗のキーマンだった小早川秀秋に対しては西軍の三成は 「秀頼が成人するまでの期間限定で関白に」と最高権力者の座を提示、東軍の家康は「二カ国を加増します」と提示、どちらも魅力的な条件を提示していたと言われています。

ここまで好条件がそろうと当然迷うことになるので、秀秋はギリギリまでどっちつかずの対応をしていました。が、最後は東軍につくことになり、これがキッカケになって関ヶ原の戦いでの東軍勝利が確定しました。

関ヶ原の家康の勝利は事前に情報戦で種をたくさんまいていたからこそのものだったわけです。これも、戦場以前のところでだいたいの勝敗が決まりかけていたという話で「まず勝ちて、後に戦う」の事例のひとつだと思います。

戦国武将だと織田信長の戦い方もだいたいは実は王道の戦い方をしていて、桶狭間以降は「敵より多くの兵力を集めて戦う」という「勝つべくして勝つ作戦」ばかりやっています。革新的なイメージの強い信長ですが、戦い方に関しては「超堅実派」だったということです。

理論的には正しいけど

さて、「勝兵はまず勝ちて、後に戦う」は理論としては正しいのですが、少し出来レース感の漂う理屈ではあります。実際に成功した事例を後から分析すれば、「成功は必然だった」というロジックを後付けでこじつけるのは非常にカンタンだからです。

なので、この名言は「基本的な理想」もしくは「成功事例の説明ロジック」として聞く必要があると思います。特に、「歩きながら考えるのが得意」な人は、「それは理想ではあるけど、自分はやらない」という発想でいいと思います。

準備万全派か、まず行動派か

タイプの問題として、「とりあえず何でも軽くやってみて、それから考える」という人と、「しっかり考えて万全の準備をしてから、実践に移す」という人といます。

ダンスなどでいうなら、まずは実際に身体を動かして踊ってみる、それから真面目にやりたくなったら、必要に応じて基礎訓練をしっかりやっていく、というスタンス、走りながら考えるほうが向いている人もいます。人数としては恐らくこちらのほうが多いでしょう。

一方で、3年かけて体のトレーニングをして動ける身体をつくり、それからダンスのレッスンにいく、という人もたまにいると思います。こちらのメリットとしては、実践にはいった時に超スピードで進化できるという点があります。

「完璧に準備を整えてから、イージーゲームで実践する」というスタイルが得意な人にとっては、「先ず勝ちて、後に戦う」は至言です。ただ、「とりあえずやってみから、調整していく」という人にとっては、「故に将、九変の利に通ずる者は、兵を用うることを知る。」とか「君子豹変」とか、「臨機応変こそが重要」という名言のほうが感覚的には近くなるでしょう。

(君子豹変は現代語では悪い意味で使われることも多いですが、もともとはよい意味で「変わるのが早い」という褒め言葉です。)

「先ず勝ちて後に戦う」方式だと、何も行動できないまま終わってしまうというリスクがあり、逆に、情熱だけで見切り発車しすぎると、単純な準備不足で失敗するというリスクがあります。

万全の体制を整えてから動くのか、まず走り出して走りながら考えるのか、どちらの発想がいいのかは、状況と本人の性格の両方を考えて判断していく必要があるでしょう。

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サイトの運営方針は「自分とは何か」「日本文明とは何か」という二つの問いへのインスピレーションを刺激する話をすること。人生で大切にしたい事は「遊び・美しさ・使命・勝利・自由」。 なお、日本的精神文化のコアの一つは「最小の力で最大の成果」だと思う。例えば「枯山水(禅寺の石庭)の抽象的アート表現」などは、良い例。