12月は旧暦で師走(shi-hasu)と呼びます。12月は大晦日に加えて冬至もあります。伝統行事では「大掃除」が重要です。このキーワードでまとめられる行事が多いので。なぜ「師走」かというと諸説ありますが、師匠のお坊さんが走り回る忙しい月という説があります。
大掃除
現代では年末のお休みを使って行われるようになりましたが、少し前の時代はすす払いといって13日頃からスタートしていました。
煤払い(すすはらい)
要するに昔の大掃除です。起源は平安時代くらいまでさかのぼるようです。昔は電気ではなく火を使っていましたのであちこちにすすがついてしまいました。それを払うからすす払いです。
時期は場所によって違いますが、江戸時代は旧暦12月13日に行われていた関係で現在でも12月13日前後に行う神社仏閣は多いです。現代人の大掃除も、これくらいから2週間くらいかけてやると慌ただしくなくていいのかもしれません。
西本願寺・東本願寺のすす払いもよく話題になりますが、こちらは例年12月20日に行われます。(見学・取材などは、事前にお寺へ直接お問い合わせください。)
>>三井の晩鐘のすすはらい (Youtube より)
なぜ12月13日頃に行う所が多いかというと、これくらいからお正月に備えて準備をしていたということです。正月というのが新しい神様を迎えるという意味合いを持っていたので、神様というお客様を迎える前に掃除をしようという意味合いもありました。
冬至
冬至・夏至・春分・秋分は、季節のターニングポイントなので、日本に限らずお祭りになりやすい所です。一年でもっとも夜の長い日となります(逆は夏至)。ここを境に、徐々に昼間が長くなっていきます。日本の伝統行事的なものとしては、冬至の日にかぼちゃを食べる、柚子湯に入るというものがあります。
かぼちゃ(南瓜)を食べる
柚子湯に入る
なぜ柚子湯なのかという所ですが、融通に通じる、という推論がよく見られます。
ただ、これを意味が失われた呪術儀礼として分析するなら「オレンジ色=太陽・陽気のシンボル」としたほうが意味的には面白いでしょう。太陽の復活を祝う意味が最初はあったけど、失われたと推測するわけです。
冬至に近いお祭りというとクリスマスもありますが、これはキリスト教が先行宗教のミトラ教の習俗を取り込んで冬至の日に重ねてクリスマスの日を設定したものです。冬至を境に昼の時間が増えていくことからか、太陽神の再生という儀式がミトラ教・古代ローマなどでは行われていました。そこにイエスの誕生日を祝うお祭りを上書き保存したわけです。
日本でも仏教が入ってきた時に「アマテラス=大日如来」みたいな世界観を作りましたが、後から来た宗教が先行する信仰を取り込もうとするのは洋の東西を問わない話のようです。
冬至は、穴八幡宮で「一陽来復」というお札が配られます。「一陽来復」は易経に由来する言葉で、冬至を期に陰から陽に季節が転換する時期ということです。暦の季節と実際に温かくなるのは数か月ずれますが、夜が一番長い冬至を過ぎるとだんだんと昼の時間が長くなっていきます。
大祓(おおはらえ)
神道の行事で、半年間のケガレを祓う儀式です。六月(水無月)と十二月にあります。31日に行われる神社が多いようです。初詣は非常に混雑する神社が多いのですが、大祓は正月前に気分すっきりできる上に、初詣ほど混雑する行事ではないのでオススメの行事のひとつです。
>>>熱田神宮大祓 (youtubeより)
年越しそば
大晦日(12月31日)の夜に年越しそばを食べる風習があります。江戸時代には既にあった文化のようです。
晦日(ミソカ)というのは実はもともとは月末のことで旧暦なので新月の時期です。江戸商人は月末に縁起担ぎや慰労の意味で蕎麦を食う晦日蕎麦(みそかそば)という習慣があったようです。
これが明治以降に暦が太陰暦から太陽暦に変わって、晦日という感覚はすたれるも、12月31日のものだけが残ったのが年越し蕎麦の由来という説があります。
何時頃食べようかと話題にする人も多いようですが、年越し記念だけでなく月末の「今月もおつかれさま」な蕎麦だった可能性もある習俗なので、31日の夕方の食事で食べるのがよいと思います。
除夜の鐘
12月31日の夜に108回の鐘を鳴らす習俗があります。108というのは、人間の煩悩の数と言われています。
>>除夜の鐘(Youtube より)
※なお、初夜の鐘・中夜の鐘・後夜の鐘、というのもあります。初夜といってもカップルの姫初めのための鐘、ではありません。昔の時間の見方で、夜を三等分して「初夜・中夜・後夜」と考えていたものです。初夜はだいたい夜20時頃になります。