よく分からないものを読む時に、あえて英語版を読んでみるという方法があります。外国語に翻訳されると内容がより単純になるからです。
下記は古事記の英訳を紹介します。
”Nevertheless Heaven and Earth first parted , and the Three Deities performed the commencement of creation ; the Passive and Active Essences then developed, and the Two Spirits became the ancestors of all things”(B.H. Chamberlain, translator 1882)
”然、乾坤初分、参神作造化之首、陰陽斯開 二霊為群品之祀。”(岩波文庫版)
”然れども 乾坤初めて分れて、参神造化の首(はじめ)となり。陰陽ここに開けて、二霊群品の祖(おや)となりき。”
現代語訳をすると、「だがしかし、天と地とが初めて分離して三柱の神々(アメノミナカヌシ・タカミムスヒ・カミムスヒ)が万物創造の始まりとなり。陰と陽がここに分かれて開がり、二柱の神(イザナギ・イザナミの男女)が万物を産む祖霊となりました。」等となります。
現代人の場合、「乾坤(けんこん)」と言われるよりも「ヘブン&アース」と言われたほうがイメージがわいてしまう人が多かったりするかもしれません。乾坤の乾は天で坤は地です。この辺りは、漢文が昔ほど読まれなくなり、英語を誰もが学ぶようになった20世紀後半の教育事情が影響していると思います。
乾はHEAVEN (天)
坤はEARTH(地)
陰はThe Passive Essence (受動的要素)
陽はThe Active Essence (能動的要素)
と英訳されています。中学高校と英語を勉強している現代日本人の場合、案外英語で読んでみると分かりやすくなることがあります。
日本語の神をGodではなくDeityと別の単語で訳しているのは、訳者の頭のよい所です。英語圏でGodというとどうしてもキリスト教のGodのイメージをひきずるのですが、日本語のカミとキリスト教世界である英語圏のGODはだいぶ意味が違うからです。
追記
上に引用したChamberlainによる英語訳KOJIKIは、英語圏の人にすすめるには有力な候補の一つです。ただ、解釈的には江戸時代的な雰囲気が強いので好みは分かれるかもしれません。(本はamazonで買えます。テキストだけでよければ英語で検索すればすぐ出てきます)