タイトルの通りの短時間で仕事を回せるようになって、もっと人生を楽しもうという本です。アメリカ人起業家の事例なので、日本語で使えないITツールが紹介されていたりしますが、考え方のヒントはてんこ盛りです。「本当にやりたいことをやる時間がない」と感じたことがある全ての人に役立つ本だと思います。
現代資本主義の発想は、「健康にいいものを取りましょう」とか「家を買いましょう」とか足し算発想がベースにあるように思います。そのほうがモノを売りやすいからです。この本で提案されるのは 「いらない常識は捨てる」 「いらないモノは捨てる」「最低限のものしか持たない」的な引き算発想です。
その意味では、アメリカンな起業本なのですが、意外と日本的なアート的発想に通じる本だと思います。「引き算発想」の極地が墨絵とか禅寺の石庭などです。色を使わない最小限度の装飾で最大限に目を楽しませるのが日本的な芸術の特徴ですので。
もっとも筆者はキリスト教世界の人なので、日本の神仏習合的な宗教観については「理解不能だ」と切って捨ててます。日本留学した時にその辺で苦労したらしいです。もっとも日本好きな一面もあるようで、本文によると流鏑馬をやりにきたことがあるらしいです。趣味は極める人らしいので、弓術と馬術の訓練を日本でしたのではという推測もできます(笑)
さて、こういう本を何回も読むことの一番のメリットは「9時5時もしくは9時21時で働くことが全てではない」という、当たり前といえば当たり前の話が腑に落ちるということです。細かい話も色々と載っていますが、一番は考え方の部分が変わることでしょう。
現代の日本でサラリーマン家庭で生まれた場合、かなりの確率で
「9時21時で週80時間労働の正社員をやるのが堅実な生き方である」
「ふつうの人は他に生活費を稼ぐ方法はない」
という常識を悪意なく刷り込まれがちです。
かなり年を取ってから商社マンから自営に転じた知人の話で印象的だったのが
「サラリーマンという世界の外には、こんなにも違う世界があったんだ・・・」
という言葉です。
文字通り「住む世界が違うと、常識が全く違う」わけです。
週80時間労働の世界(いわゆる正社員の世界)が嫌い、もしくは、自分には無理と感じている人は、まずそういう世界しかないのだという常識を捨てる必要があります。
といってもそう都合よく
「仕事はちゃんとしてるけど、実は週4時間も働かなくていいので、時間的にはすごく暇」
という幸せを満喫しているフリーな知り合いなんかいないかもしれません。
そういう時には本というのはかなり役に立つ「常識破壊ツール」になります。
追記
この本のレビューで、日本人で会社員(サラリーマン)だと応用がきかない話ばかりだという人がいましたが、それは発想力次第なんじゃないかなと思います。
例えば本書では「自動化」の発想が紹介されていますが、これはパソコンを使う仕事ならどんな仕事であれ、自動化で業務時間を減らせる可能性は常に隠れています。自分で家事をしているのなら、家事的な雑用を徹底して自動化するという発想もありでしょう。秘書がいなくても、出張手配を丸投げで外注するという発想もあります。(飲み会を月2回節約すれば、24時間対応のトラベルデスクのついた年会費が高額なクレジットカードでも入会できます。)
この本のような極端な事例を生かせるかどうかというのは、 「自分の環境ではできない」と切り捨てる前に、1秒でいいので 「どうしたら、自分の環境でも実現できるか?」と考える時間を作れるかが分かれ道になると思います。
本当に楽をしたいなら 「楽をするための準備にエネルギーを惜しまないこと」だけは必要です。