新技術を敵対する人達が持っていて、自分達がもっていない場合、その組織や国家は滅亡する可能性が高くなるという話があります。
東ローマ帝国の滅亡
かつての東ローマ帝国(ビザンツ帝国)は、巨大な三重城壁によって首都を守っていました。古代世界での城壁というのは現代の核ミサイルなみの「戦略的な兵器」です。15世紀の東ローマ帝国は、もはや首都のコンスタンティノポリス(現イスタンブール)くらいしか支配していませんでしたが、それでも「城壁パワー」で生き残っていました。
ところが、大砲が発達して「城壁を壊す」ことができるようになると、「城壁のパワー」は無力化されてしまいます。
ウルバンという職人は、当初、東ローマ帝国の宮廷に「当時の最新技術」だった「大砲」のセールスにいきました。今で言えば、核ミサイルを売りに行ったようなものです。ところが、大砲が城壁を壊せてしまうということを正しく認識できなかった東ローマの宮廷は ウルバンの大砲を買いませんでした。
すると、ウルバンは大砲をトルコに売り込みにいき、トルコのスルタンはこれを採用します。この大砲は数時間に1回しか発射できず、しかも命中精度は極めて低いというものでしたが、それでもコンスタンティノポリスの攻略に大きな役割を果たしました。
大砲を装備したトルコ軍はコンスタンティノポリスを陥落させ、ここに古代以来続いていた東ローマ帝国は完全に滅亡します。そして、これ以降のヨーロッパでは「城壁」は大砲対策を求められるようになり、それまでとは違う構造で建てられるようになりました。
(コンスタンティノポリスの城壁。こういう直立した城壁が古代~中世の流行り。写真引用元wikipedia)
(五稜郭。幕末の西洋式のお城。こういう感じの低めの城壁が流行り出した。写真引用元wikipedia)
東ローマ側の反省点は多々ありますが、大砲に関して言えば「自分達で独占的に買っておくか、ウルバンを殺して技術を闇に葬るか、どちらかだったのに・・・」という話になります。
イスラエルの事例
ところで、現代だとイスラエルは東ローマ滅亡の教訓をよくわきまえているようです。
まず、自分達はアメリカなどの協力を経て現代の最新兵器である「核兵器」を配備します。そして「核兵器を保有すること」を国際社会に黙認させています。(イスラエルはパブリックな核兵器保有宣言はしていませんが、国際的には核保有国であるという暗黙の了解のもとに扱われています)
その一方で「イスラエル周辺の国が核兵器を持つことを、全力で妨害」しています。1981年にイラクの原子炉を、空軍を出していきなり爆撃して破壊したのはそのいい例です。(バビロン作戦)
最新技術の兵器は、「自分はもつけど、周囲にはもたせない」というのは、国家の生き残り戦略としては基本的な発想になります。
現代日本の場合で考えると
国レベルでいえば、北朝鮮や中華人民共和国に核武装を許してしまった時点で、日本国にとってかなりマイナスポイント、というのは言うまでもないでしょう。
企業レベルで考えると、
たとえば有機EL(新型のTV)ですが、「技術者をどんどんサムソン(韓国企業)に引き抜かれたことで、最新技術がどんどん流出した」という話はよく知られています。
新技術が流出してしまったばっかりに、今や「スマホやTVなどの、有機ELはサムスンの独壇場」になっている状況があったりします。
技術者の待遇が低い故の失敗といえば、青色LEDなどの話もあると思います。結局、人材が流出してしまうのは、適切な待遇がなされていないからです。
国防テーマではないので「外部に人材をとられるくらいなら殺してしまえ」とは言いませんが、人材流出の対策をしないと「せっかく、苦労して開発してきたのに、おいしいところはもっていかれる」ということになりかねません。
よりパーソナルな話なら
企業レベルや国レベルではなく、パーソナルなことを考えるなら「パソコン・スマホ」などで活用できる「新技術」には、とっても積極的になったほうがいいという話になります。フル活用している人と、活用してない人とでは、生産性が10倍20倍と違ってきますので。1人対100人で競争するような状況になってしまいます。