男性のはじめての着物について < 後編> 帯と呉服屋の選び方

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帯は、男の場合は角帯か兵児帯を買うことになりますが、最初は角帯がオススメです。ネクタイをはじめて結ぶ時に練習が必要だったのと同じで、帯を結ぶ時も練習は必要です。が、これが結べるようになると、男の着物の最初にして最大の難関は完全に突破したようなものです。

帯とネクタイの意外な共通点

高い帯と安い帯の違いは、結びやすさの違いです。市販価格1万円以下のものは多くが、ペラペラの帯であることが多いです。一方で3万円以上のクラスになってくると、生地がしっかりしているものが多く、結び目をカッコヨク作るのが非常に楽になります。

ここは実は、ネクタイの選び方と同じです。セール98円のネクタイはペラペラですが、3万円の高級ネクタイは生地がしっかりしているので非常に結びやすいです。帯を選ぶ時は、ネクタイを選ぶ時と同じような感覚で選ぶと楽だと思います。不思議なことに帯とネクタイは予算感が似ているのです。

あと、帯に関しては背の高い男性には朗報です。背が高い男性は古着を入手することが困難であると前編で書きましたが、帯に関しては一応古着が使えるケースが少なくありません。もらえた時はありがたくもらっておきましょう。

呉服屋の選び方

最後に呉服屋の選び方をいくつかあげておきます。

まず当たり前ですが男の着物をやっているか、という点からチェックしてください。意外に着物屋さんの中には「セレブな有閑マダム専門」みたいなお店も少なくありませんし、残念ながら男物を黒紋付(男性和服の礼装)以外は扱っていないお店もたくさんあります。

次に、店頭へいく場合ですが男の店員が着物を着て接客してくれるかという点もポイントになると思います。ユーザーとしての経験値が高い人が接客を担当しているかということです。スーツをきて接客するお店を悪とはいいませんが、着物を普段着として着こなしている店員さんに接客されるほうが買い物が楽しくなると思います。

あとは、自制心が高い人はどうでもいい話ですが、ついノリで買ってしまう人は事前に予算を決めて、その範囲から出ないで買うようにすることをおすすめします。

オーダー商材のお店の特徴として、スーツ屋もそうなのですが見ていると段々と高いほうに目が行くようにディスプレイがされています。6万円くらいでコートを仕立てようと思って、結局20万円のものを買っていた、というのはよくある話です。(金額は筆者の実話)

なので、最初は下見だけをして予算感をつかみ一週間後にもう一度行く、といった二段階作戦をおすすめします。自分の着物ライフスタイルがはっきりしないうちは、衝動買いは控えたほうがよいということです。

あとは、着物のドレスコードに関してガチガチにうるさくない発想の店のほうがよいでしょう。お茶の稽古などでの利用でなければ、「9月=この素材、11月=この素材」みたいな慣習はそれほど重視する必要はありません。第一礼装を求められるようなシーンは別にして、暑い日は薄い素材の着物、寒い日は厚手の素材の着物、というくらいで実用本意で考えてしまって問題ありません。基本的には、真夏に上着を着てネクタイをしめる必要はないということです。

この辺の本音は、業界の中の人達は本やネットでは書きにくい部分だと思うので、対面で雑談する中でさらっと話を聞いてみるのがいいと思います。

最後に、店選びは「好き嫌い」で選ぶことも重要です。店員さんの洋服のセンスがダサい洋服屋で服を買いたい人はいないと思います。着物も同様です。「カッコいい」とか「渋い」とか、どこかしら「この人の着こなしをマネしてみたい」感じがある店員さんがいるお店で買うといいと思います。初心者にとっては、店員さんはある意味で「着物の先生」ですので「真似する対象としてふさわしい」人を選ぶ必要があります。

おまけ情報

反物だけ買って仕立て屋に直接発注するという裏ワザもあります。が、そんなに大幅に安くなるわけでもないので初心者にはお勧めしません。

直接頼むための前提として

1.自分の着物用の寸法が全て分かっていて、好みで微調整もできること
2.仕立て屋の腕(スキル・センス)を見抜く力があること 
3.職人と対等に会話ができる着物の基礎知識
4.柄合わせなどのセンス(反物から作るので、柄をどの位置に持ってくるかで違う印象の服になります)

などが必要になります。

技術者にストレートに仕事を頼むと発注者側で行う作業が増えてしまいますので、基本的にはセンスのいい呉服屋さんを見つけて任せたほうが楽だと思います。

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サイトの運営方針は「自分とは何か」「日本文明とは何か」という二つの問いへのインスピレーションを刺激する話をすること。人生で大切にしたい事は「遊び・美しさ・使命・勝利・自由」。 なお、日本的精神文化のコアの一つは「最小の力で最大の成果」だと思う。例えば「枯山水(禅寺の石庭)の抽象的アート表現」などは、良い例。

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