ワイシャツの袖は上着から出すべきか問題の考察

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スーツの袖からシャツが出ていないといけない、とファッション雑誌などに書いてある説が、本当なのかということを考察してみました。西洋史の文脈から考えると、本当といえば本当、という結論になりました。

ヨーロッパの古い服をいくつか見てみると

ヨーロッパの服の歴史をふまえた運用をしたいのであれば、シャツの袖は上着から出すという発想は自然と導かれやすいと思います。ヨーロッパの歴史上の有名人の絵をいくつかチェックしてみると、シャツは上着よりも出して見せている絵がたくさんありました。

デカルト 17世紀フランス

René_Descartes_i_samtal_med_Sveriges_drottning,_Kristina
( Nils Forsberg After Pierre Louis Dumesnil (1698-1781)  wikipediaより )

現代でいう、クレリックシャツ(事務員シャツ)の元祖のように見えるものを着てます。デカルトは、シャツの袖は、上の服よりも長めです。(白いシャツを折り返している)

ヘンデル 17世紀神聖ローマ(ドイツ)

Haendel
( wikipediaより)

現代人目線だと、白ネクタイっぽくも見えます。シャツの袖は長いです。

ビョ―トル1世 18世紀(ロシア)

Peter_der-Grosse_1838
( wikipediaより )

これも袖から白いシャツがばっちり出てシャツを見せる着方です。

ジョージ4世 19世紀(英国)

George_IV_in_kilt,_by_Wilkie
( Sir David Wilkie’s flattering portrait, painted in 1829, of King George IV in kilt during the visit to Scotland in 1822. wikipediaより)

シャツ、デカルトやピョートル1世やヘンデルに比べると、だいぶ、地味になってきました。19世紀になると見せ方が、かすかに見える程度になっています。

この辺くらいだと、現代のスーツでわりと見るサイズ感のシャツの出し方です。

まとめ

ということで、ヨーロッパの歴史上の人物たちの肖像画をトレースしてみると、「シャツは上着より出して見せる」という着方があったことがわかります。となると、現代のスーツにおいても、シャツが長く出ている着こなしのほうがオーソドックスな着方に見えてきました。

出す分量は、たくさん出ているほうがやや華やかに見えます。出すか出さないかの出し方だと地味に見えます。

とはいえ、日本人の場合は欧州の歴史に接続した着こなしをする必要性は必ずしもないので、迷うならどちらでもいいところかとは思います。(日本史につないで考えた場合、公家も武家も礼装で袖側で下の服を積極的に見せる発想は見られないので。)

チラ見せがオシャレな訳(?)

なお、ヨーロッパにおけるシャツというのは「下着」という認識が残っています。日本の気候は高温多湿なのでシャツのしたにさらに下着を着ることが多いですが、肌の上に直接きるアンダーウェアがシャツなのです。

実際の発想がどうだったかは分かりませんが、チラ見せがカッコイイというのは、少しだけ見せてはいけないものがのぞくのがオシャレ、という発想もあったのかもしれません。

マンガすすめ

そして、王様の仕立て屋という、美味しんぼにおける料理をスーツ仕立てに置き換えたようなマンガがあります。

うんちくも適度で、面白かったのでスーツ好きにオススメしておきます。

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サイトの運営方針は「自分とは何か」「日本文明とは何か」という二つの問いへのインスピレーションを刺激する話をすること。人生で大切にしたい事は「遊び・美しさ・使命・勝利・自由」。 なお、日本的精神文化のコアの一つは「最小の力で最大の成果」だと思う。例えば「枯山水(禅寺の石庭)の抽象的アート表現」などは、良い例。

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